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研究室の森林水文研究で解明されてきていること
現在、共同研究(地域環境水文学・高瀬研究室)として大洲市内に森林水文試験地が3カ所あり、それらの試験地で降雨量と流出量の観測が実施されている。この3試験地の植生は、スギ・ヒノキ人工林(整備林、未整備林)と広葉樹と針葉樹の混交林である。ここでは、これらの試験地をA試験地(整備林:観測期間8年)、B試験地(未整備林:観測期間2年)、C試験地(広葉樹・針葉樹の混交林:観測期間25年)と呼ぶ。流域面積は約10haから約20haである。森林観測タワー(写真-3:高さ約36m)は、A試験地に設置されていて、さらに、相互に比較するために3試験地の位置関係は、大洲市内の約9kmの範囲内にある。
さて、大洲市の年平均降水量は約1600mmで松山市よりやや多い。この降水量に対して蒸発散量は約700mm〜900mmであった(C試験地10年間の降雨量と流出量の水収支式の計算結果による。ここで水収支式とは、降雨量を入力として、流出量、蒸発散量、流域貯留量の変化量に配分される式のことである。)。年のばらつきは思った以上に大きい。これは、その年の降雨量と気象条件(気温、日照、その他)の影響を受けるからである。しかし、これらの試験地では、大雑把に言うと年降水量の約半分が蒸発散量で、流出量はその量と同じ程度であると言える。本来、森林流域では蒸発散量がきわめて多い。その理由は、森林が他の植生(畑、水田、草本)より遮断蒸発量が多いためである。遮断蒸発量とは、降雨が地表面(林地)に到達せずに、蒸発する量である。年降雨量が少ない地域では、森林の蒸発散量が多いことは、水源涵養にとって森林はマイナスの要因を持っていると認識すべきである。
A試験地の森林観測タワーで、森林フラックス観測を実施した結果、森林からの蒸発散量が800mm程度(2004年)であり、水収支式の計算結果とあまり違いがないことが分かってきた。
蒸発散量は、月毎では冬期(12〜2月)は平均約1mm/日(ただし、積雪がある場合は除く)、春期・秋期(3〜5月、9〜11月)は平均約2mm〜3mm/日、夏期(6〜8月)は平均約4mm〜5mm/日である(2004年の森林観測タワー観測値より)。この値は、人工林であるスギ・ヒノキ林の値あり、落葉広葉樹林の値ではない。夏期にこの値が大きいのは、太陽放射エネルギー(日射量)が大きく、気温が高いため当然であるが、冬期にも約1mm/日であることに注意が必要である。このように冬期に落葉しないスギ・ヒノキ林では、積雪がない限り、蒸発散量が零になることはなく、1ヶ月間に約30mmもの水を損失していると考えなくてはいけない。そのため、愛媛県では冬期は降雨量が少ない(松山市で1月約50mm、2月約60mm)ため、この影響は大きいと考えるべきである。
次に、森林観測タワーで気象観測を行うと同時に林内雨量観測を行っている。これによって、年間の遮断蒸発量を推定している。ここで、林内雨量とは、降雨が樹冠の枝葉に遮断され蒸発する水(遮断蒸発)以外の林地に到達する降雨量であり、林内雨量の観測は、樹冠通過雨量、滴下雨量と樹幹流(樹木の枝幹を伝わって流れる落ちる雨水のこと)を測定することで求められる。これらの観測値と数値モデル(樹冠遮断タンクモデル)を用いて2004年から2005年の樹冠遮断量を推定したところ、年約300 mm〜400mmの値を得た。およそ蒸発散量の50%であり、その量はかなり多い。さらに、数値モデルを用いて30%間伐の効果を試算すると、樹冠遮断量が年間約35mm〜44mm減少することがわかった。これには、間伐による蒸散量の減少分は含まれていないことから、30%間伐で40mm以上の減少が期待できる。そのうちの何割が流出量に寄与するかわからないが、年間降雨量が少ない愛媛県では無視できない値と考えられる。
最後に、現在、愛媛県(と水土里ネット愛媛)の協力を得て未整備林の水文観測を開始している(B試験地)。観測結果の例(2009年8月の一部)を図-1に示す。最大15mm/hrの降雨強度時の洪水流出波形を示す。明らかにB試験地の流出は、最大流量が大きく、減水変化の勾配が急であり、水源涵養的には好ましくない。なお、B試験地の未整備林とは、立木密度が非常に高く整備が遅れている森林ではなく、間伐、枝打ち等の管理が長期間、全く実施されていない放置森林である。このように、洪水流出特性の明らかな違いの原因が、森林管理の整備、未成備の差異にあると思われるが、今後データの蓄積を待って、より詳細な解析を行う必要がある。
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