リンク集掲示板ご意見箱サイトマップ
FOREST FUND OF EHIMEOpening FLASH

web番愛媛の森林
「愛媛の森林」を考える

松本局長

 ありがとうございました。
 東京市長や内務大臣を歴任し、日本ボーイスカウトの初代総長でもあった後藤新平は、「金を残すのは下、事業を残すのは中、人を残すのが上」と言い、自ら実践したと伝えられています。地域コミュニティの崩壊による「地域教育力」の低下が叫ばれる現在、森林教育に期待される役割は、ますます大きくなってくるのではないでしょうか。人を残すためには、将来を担う子どもたちに健全な森林を残してやらなければならないとの思いを改めて強くしました。森林を創るのには数百年の年月を要しますが、子供は10年で育ちます。鶴見先生の講座や緑の少年団に参加した子どもたちが大人になるとき、「愛媛の森林」は、彼らの手によって守り育てられていくことになるのではないでしょうか。
 最後に、「愛媛の森林」の可能性、あるいは未来の「愛媛の森林」について、皆さん、一言ずつお願いします。



「愛媛の森林」との新しい向き合い方
----鶴見先生
鶴見先生

 
今の都市部での生活は、あまりにも自然から離れすぎてしまいました。その結果、形骸化した言葉だけの無味乾燥ともいえる人間関係に悩む人も少なくありません。冬枯れの大地から薄黄緑色のふきのとうが顔を出し、春が来たことを告げている、そのことを発見したとき、ふつふつとうれしさがこみ上げ、自然をいとおしむ感情が芽生えます。自然に接するということは、人間性を回復する最も有効な手段ではないかと考えます。
  私は、21世紀は、一人の人が機械の歯車のように、ある一部分を担って生きるという生き方よりも、できることから自分たちの手で生活を創造していく生き方を選ぶ人が増えていくような気がしています。最先端の科学技術を謳歌する方向と、自然に帰る方向が同時にめざされ、都市部に住む人が、週末は、森林の手入れをしたり、安全な米や野菜を作ったりすることを、リ・クリエーション(再創造)とするような時代がすぐ近くまで来ていることを感じています。
  小学生と森林の中で、樹幹に耳をつけて、水の流れの音が聞けるかといった体験活動を行ったとき、参加者の表情が穏やかで敬虔なものになっているのを発見しました。森の中にいるだけで、人としてのぬくもりを回復することができる、そういった存在として、森林を自分たちのもっと身近な生活に取り入れてほしいと願っています。そうなった時に、愛媛の森林は森林の持つさまざまな働きを遺憾なく発揮してくれるのではないでしょうか。

これからの「愛媛の森林」と暮らし
----岡田嘱託
岡田嘱託

 暮らしの根源を支える森林は、酸性雨の増加など外的要因が無く、適切な管理がなされれば永遠に存続するものです。先生方のお話にもありましたが、今、地球規模的にみて大きな課題は化石燃料の大量消費に伴う地球の温暖化と人口の急増による食糧不足問題です。温暖化については、天然林、人工林を通じて生長の旺盛な森林を恒続的に育成すれば温暖化の元凶である二酸化炭素の削減につながります。そして二酸化炭素を閉じ込めた木材で良質の家屋を建てれば、長期間にわたって二酸化炭素の安定化につながります。
 食糧問題に関しては、増産のためには肥料が欠かせませんが、便利で効率の良い化学肥料も、現在のペースで食料が消費された場合、化学肥料の原料である燐鉱石も、同じく主成分の一つである石油もあと50年余りで枯渇するとの試算結果もあります。このように、地球の天然資源は環境と同じく有限であるということを認識することが大切です。それに比べて森林は取り扱いさえ誤らなければ永久に再生産可能な資源なんですね。昭和25年当時、本県は、木材、薪炭を始めとして、竹材は全国12位、タケノコ3位、和ロウソクの原料となるハゼの実2位、クリ4位、薬や染料の原料になる五倍子(ごばいし)6位、干しシイタケ17位、主にロープの材料となったシュロ皮5位、肉などの生鮮食料品の包装材に使われていた竹皮1位、屋根葺きの材料であったスギ・ヒノキ皮5位、和紙の原料であるミツマタ・コウゾ2位、ガソリンの代替材であった松根油5位と、多種多様の林産物が県内の森林から生産されていて、これを生業にしていた人は6万人近くに達していました。当時は暮らしに役立つ豊かな森林だったんですね。一方、これを今、森林を経済的に評価しますと、県内の森林の持つ水源かん養などの公益的機能は、平成12年度時点で、年間1兆1,267億円の評価額になるとの試算結果も示されています。
  限りなく広がる国際化と効率を最優先する資本主義経済が高度化を続ける中、未来永劫に人類の繁栄を約束する資源と環境を守るためには、森林を経済面からのみ捉えるのではなく、公益的機能を重視した考え方に思考を切り替えるとともに、そこに生きる人々の暮らしに対する意識の改革も必要ではないでしょうか。現在、世界では毎年日本の国土の3分の1にあたる1,100万haもの森林が失われています。実は、本県でも、この30年間に坊っちゃんスタジアムのグラウンド約280面分にもあたる約400haもの森林が減少しています。昨年の世相を代表する言葉は"帰"でしたが、これは「県民共有の財産」として森林が評価され、役立っていた時代のスタンスに意識も対応も戻して、自然を主体にした暮らしに帰りなさいということも包括しているのではないでしょうか。
  森林によって形作られる環境があってこそ始めて人間の生存基盤、言い換えれば日々の暮らしが守られるのです。「待てば海路の日和あり」の示唆するところを我々は忘れてはなりません。
  今後は、天然林については極力維持コストを削減し、自然力を活用して生産性をアップさせることが大切です。県内に現存する全国有数の人工林については、初期投資が既になされているのですから、暮らしに役立つ森林として、今後も育てていかなければなりません。経営環境の厳しい林業界ではありますが、地域の実情に即した打開策を考究し、名実ともに「県民共有の財産」としての森林に仕上げていかなければなりません。
森林の持つ公益的機能とは

「愛媛の森林」の可能性(ポテンシャル)
----江崎先生
江崎先生

 現在の森林・林業の状況を考えると、皆さん意外に思われるかもしれませんが、私は「愛媛の森林」の将来は、非常に明るいと思います。

●化石燃料枯渇時、社会を支えるエネルギー資源としての森林

 というのも岡田さんのお話にもありましたが、石油資源は、あと50〜60年で枯渇するといわれています。これに替わる代替エネルギーとしては、原子力、太陽熱、風力、地熱、バイオマス資源の利用などが考えられています。それらの内、原子力は21世紀中に人間が制御するのには困難な点が出て来るというのが大方の見方であり、バイオマス資源以外は、経費や効率などの面で多くの課題を抱えています。そのようなことから、今、一躍脚光を浴びているのがバイオマス資源なんですね。その中でも最も注目されているのが森林資源であり、スギ、ヒノキなどの人工林が注目されています。
バイオマスエネルギー(ウィーンの森)
<バイオマスエネルギー(ウィーンの森)>
豊かな森林が広がる北欧のフィンランドやスウェーデンでは、既に一次エネルギーの内、20%程度はこのバイオマスによるエネルギーで賄っていますが、日本ではほとんどゼロに近い状況です。このことが、これからのエネルギー源として大いに期待される由縁なんですね。
  愛媛の人工林率は、先程お話ししましたように、日本でも非常に高い方に位置しているわけですが、高いということは、それだけ高い可能性を秘めていることになります。循環型社会への順応性が日本では一番高いと言っても過言ではないと思います。人工林率が高いということを、とかく先人達の「負の遺産」と見る風潮がありますが、そう考えるのは短絡的ではないでしょうか。決して「負の遺産」などではなく、先人達が我々に与えてくれた「正の遺産」であって、今後、我々がこの「正の遺産」をいかに有効に活用していくかということが、今、問われているのです。
スギの人工林
<スギの人工林(久万町)>
  森林であっても天然林では代替エネルギー源としての循環性は成立しません。現在の人工林率を維持しながら、その中で環境に優しいエネルギー資源として、スギ、ヒノキの人工林を有効に活用していくべきなのです。先程、松本局長さんの言われた、木材のエネルギー備蓄基地も夢物語では無くなるかも解りませんね。(笑)


●感傷や郷愁ではない、新しい「愛媛の森林」を目指して

 これから再生可能な森林資源をエネルギー資源や産業資源として有効に活用していくために、我々は、しっかりと将来を見つめ、現在の森林の整備を確実に進めていかなければなりません。そうしなければ、我々の子孫に「未整備の森林」という、本当の「負の遺産」を残すことになってしまうのではないでしょうか。


松本局長

 比叡山延暦寺を興した最澄の言葉に、「一燈照隅、万燈照国」というものがあります。これは、一つの燈火は一つの隅しか照らせないが、一人一人みんなが灯をともせば、国全体が明るく照らされる。つまり、私たちがそれぞれの立場で出来ることには限りがあるが、国民一人一人がそれぞれの立場で自分の職分を尽くせば、国全体が良くなっていくという意味です。
  現在の我が国の森林・林業の惨状に対して、自分一人ぐらいが何かをしたって、何も変わらないと考えるのではなく、一つ一つの現場は点と点にすぎないけれども、それがみんな結びつくことによって、線になり、線が無数に広がって初めて面になるのだと考え、今、私たち一人一人が、それぞれの立場で出来ることを一所懸命にやっていくことが、結局、日本の森林・林業を救い、愛媛の森林蘇生や地球環境の復元につながるのではないでしょうか。
  「愛媛の森林」が千年後も森林であり続け、県民の共有の財産としての森林から、様々な恩恵を享受できる、明るい未来を目指して努力したいと思います。
  本日は長時間にわたり、本当に有り難うございました。

←戻る
次へ→


Copyright(c) 2012 FOREST FUND OF EHIME. All Rights Reserved.