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web番愛媛の森林
「愛媛の森林」を考える

松本局長

 ありがとうございました。
 「日本の国土のことを知りたければ四国を調べよ。」という言葉があると聞いたことがありますが、「日本の森林の植生を知りたければ、愛媛の植生を調べよ。」といったところでしょうか。
 また、マツは県木でもあり、南海地震に備えるためにも、おいしいマツタケを食べるためにも、積極的に保全していきたいと思います。(笑)
 さて、自然のままであれば、江崎先生からご説明いただいたような森林になるわけですが、実際には我々の祖先は森林を上手に利・活用しながら、生活をしてきました。森林基金では、昨年度、森林・林業・林産業の実態と継承されている技術、及びこれらと県民生活との関係について、平成4年度から調査研究してきた成果を「愛媛の森林と暮らし」と題して発刊したところです。
 本日、ご出席いただいている岡田さんは、編集委員として、とりまとめにご尽力いただいたわけですが、編集を通じて「愛媛の森林」と、先人との関わりについて、どのようにお感じになりましたか。

森の恵みに支えられた生活、
記憶の中の 「愛媛の森林」と暮らし

----岡田嘱託
岡田嘱託

 私が「愛媛の森林と暮らし」の編集を通じて強く感じたことは、先人たちが、いかに巧みに森林を利活用し、森林の恵みに支えられた、本当の意味での豊かな暮らしを送っていたかということですね。
 暮らしといえば基本は、衣・食・住が賄えることにつきますが、私の子供時分頃までは、この全てについて森林が深く関わっていたんですね。

●森の恵み「食」

 人間が生きていくためには、まず「食」を確保しなければなりませんが、一番手っ取り早く手に入るのは、木の実や木の芽や山菜などであり、これを採取する場所は当然森林だったんですね。
 農耕民族であった私たちの祖先は、こうした食物を安定的に得るために農用地を求めました。対象となった場所は、海岸近くの砂州などもありましたが、多くは平地林を含めた森林が中心でした。
 ご存じのように、本県の特産物である柑橘を始めとする果樹園も、元は森林を開墾したものです。
いろいろな木の実
いろいろな木の実
(左からシイノミ、ミズナラ、クヌギ、トチノミ、オニグルミ、クリ)
果樹園
<果樹園>

●肥料の基本、チッソ・リン酸・カリ

 私の子供時分は、田畑で作物を栽培する場合に欠かすことの出来ない肥料は、推肥の元になる落葉は直接森林から、緑肥は森林の一部の肥草山から採取し、油カスと合わせて窒素肥料にしていました。
 また、魚介類以外の蛋白源などとして牛馬などの家畜を飼っていましたが、その飼料は森林の周辺にあった原野から刈り取って与えていました。家畜の糞はきゅう肥として利用し、肉を食したあとの残物と骨粉を合わせて燐酸肥料として活用していました。
 日々の煮炊きや暖房に欠かすことの出来なかった薪や炭は、当然のことながら森林から伐出加工されたものですが、熱源としての努めを果たしたあとの木灰も加里肥料として使っていました。これらと農作物などを利用したあとの生ゴミに下肥を加えたものが、昭和初期に化学肥料が製造され始めるまで肥料の主役だったんですね。
 食物を得るための、土地も肥料も燃料もすべて森林が提供してくれていたんです。


●森の恵み「衣」

 つぎに寒さなどを凌ぐための衣服や寝具などの「衣」も、戦後は、工場で製造される化学繊維や、外国から輸入される羊毛や綿花などが主流となりましたが、戦前は、山畑で育てた綿からの木綿と、桑畑を利用した養蚕からの絹で、自給でしたね。


●森の恵み「住」

個建建築に使われる木材使用例
<個建建築に使われる
木材使用例>
 我が国における、森林と暮らしのかかわりで最もウエイトが高いものは、言うまでもなく「住」です。直接的にも間接的にも、また量的にも森林そのものの利用と言っても過言ではありません。「住」と言えば建築物ですが、終戦までは殆どが木造建築でした。県都松山でも、非木造は公共施設である県庁、市役所、日本銀行、図書館と松山大学本館くらいで、他はすべて木造であったと記憶しています。この傾向は昭和40年頃まで続き、新築の個人住宅は殆ど木造でした。現在は2割程度でしかない木材の自給率も、当時は7割もあり、量的にも、外材を含む現在の木材需要量に匹敵する供給量があったんですね。このように、我が国では、 森林なくして「住」は考えられなかったんです。

●主な構造材(一般的な住宅で、無垢(むく)の国産材を対象
部材名称
樹種
長さ(m)
厚さ×幅(mm)

1

柱類[通柱含む] ヒノキ、スギ 3,4,6 105×105, 120×120
2 土台
[火打土台含む]
ヒノキ、スギ、ヒバ 2,3,4 105×105, 120×120
3 桁(けた)類 スギ、アカマツ、クロマツ、ヒノキ、ツガ 3,4(角)
3,4,5,6(丸)
厚さ150,180,210,240,270,300 幅105,120
末口径150,180,210,240,270,300
4 筋かい スギ、ヒノキ 3,4 30×90, 30×105, 45×90, 45×105
5 ぬき スギ、ヒノキ 3,4 15×75, 15×90, 15×105, 18×105
6 間柱 スギ 3,4 30×75, 30×90, 30×105, 30×120
7 小屋ばり類[丸太] アカマツ、クロマツ 3,4,5,6 末口径150,180,210,240,300
小屋組 8 筋かい スギ、ヒノキ 3,4 30×90, 30×105, 45×90, 45×105
9 棟木(むなぎ) スギ 2,3,4 5×75, 90×90, 105×105, 120×120
10 母屋(もや) スギ 2,3,4 75×75, 90×90, 105×105, 120×120
11 たるき スギ、ヒノキ 2,3,4 40×40, 40×45, 55×55, 60×60
床組 12 床づか アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ 床高による 75×75, 90×90, 105×105, 120×120
13 大引(おおびき) アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ 2,3,4 75×75, 90×90, 105×105, 120×120
14 根太 アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ 2,3,4 40×40, 40×45, 55×55, 60×60

●日本の生活は「木の文化」

 また、日々の暮らしで必要な、様々な器具や道具なども、殆どが森林から産出される木材を利用したものでした。現在では、様々な人工樹脂などが開発され、殆どのものがそれらに置き換えられてしまいましたが、今でも鍬など各種の道具の柄のように直接手に触れるものは、生あるものの感触の良さや直接感じる暖みなどからか、多くのも のが木材で作られています。
 このようにして見ますと、私たちの生活は、正しく西洋の「石の文化」に対して「木の文化」であり、その生活文化の根源は森林にあったということを、つくづくと実感するのです。
 現在、「衣」については殆どが外国頼りであり、「食」に関しては、先進国中最低の、カロリーベースで4割程度しか自給率がなく、「住」の主体である木材は、国産材に十分な供給能力があるにもかかわらず、2割程度の自給率となっています。
 循環利用が可能で理想的なエネルギー資源としての薪や炭も、近代の効率主義の世の中では、地球温暖化の要因とも言える石油などの化石燃料に取って代わられ、趣味の分野でしか利用されていません。
 私たちは、地球の資源と環境を酷使して「豊かさ」と「便利さ」を追求してきました。しかし、そろそろ「便利さ」と「豊かさ」とは全く別物であるばかりでなく、お互いに相容れないものであるということに気づき、真の豊かさを求めて行かねばならない時期に来ているのではないでしょうか。
 森林と共に生きた先人たちは、私たちが、現在目指して達成出来ないでいる「循環型社会」を、遙か昔に既に構築していたのですから。

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