木は人によりて森となる
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(財)愛媛の森林基金運営協議会委員
日本ボーイスカウト愛媛県連盟 副連盟長
愛媛県倫理法人会 副会長
(株)アイモク 会長
井上昌俊
<Inoue Masatoshi>
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私が木材業界に従事し、おおよそ半世紀が過ぎた。戦後焼け野原になった日本全土が復興され、高度経済成長にのって木材は大いに活用された。年々需要が拡大し価格が高騰。買い手市場の今では考えられないほど、仕入れることが仕事の大部分を占め、仕入れれば売れた夢のような時代を私は生きた。そのような時代だったので、山は当然、資産形成の対象として大いに注目され売買された。
現在全国で問題となっている放置林を増やさないためにも、木材の需要を拡大することは重要だ。私のような木材を生業として生きてきた者にとっては「木材ブーム再び」と願わずにはいられない。木材は再生可能な資源であるから現在のエコロジーブームにもマッチする。外国産材にも押され需要が減ったが、国産材はもちろん、森林そのものの利用を拡大するシステムを考えなければならない。ご存知のように県産木材を最大限に活用した日本一の規模と内容を誇る武道館が今年十月に完成予定であるし、現在公共建物の仕様には県産材の利用が多く推し進められていることは、木材需要拡大のためにとても有り難いことだ。
しかし、先のような方法で木材の需要を増やして森林を活性化することにプラスして、私たちの森林資源活用に対する考え方を少しだけ見直す時代が来たように思われてならない。それは、消費者直結の手法をもっと模索すべきではないかということだ。
秋田県に「大潟村あきたこまち生産者協会」という会社がある。この会社は大潟村の中でとれた有機低農薬米だけを全国にインターネットで販売する生産者の集団らしい。聞いた話では購入会員が40万人もいるらしい。この会社のすばらしいビジョンを紹介したい。
「大潟村あきたこまち生産者協会では、すべての事業を行うにあたり、社会的責任を認識し、良好な地球環境の保全に貢献するよう事業活動を行う。また、米通販主業務については、米の生産から、米の炊飯にいたるまで、良好な地球環境の保全に貢献するように事業活動を行う。」
このように一生懸命、誠実に消費者に訴えかけて厳しい農業を支える会社が全国にはある。この会社の話を聞いたときに、同じように全国の消費者に愛媛県の森林を(森林に関する生産物やシステムを)直接買ってもらうことはできないだろうかと考えた。
木加工品や生産品ばかりではない。県下にはいろいろな施設が官民大小多くある。私も講演活動で県下隅々まで回るのだが、山間においても地元の人のための地元の人しか知らない、実にもったいない施設がある。新しい文化会館もあるし、古い廃校や庁舎もある。これらが森林環境をテーマとした情報発信をする場とならないものだろうか。実際はコンクリート造の建物が多いので少しは森林のイメージと合うように改装すべきところも少なくないが、どちらにしても、周辺の森林環境にマッチした既存の施設で教育事業や観光事業が企画できるように思う。これらを、愛媛県全土で体系化し、森林を切り口とした情報発信がうまくできれば多くの人々が愛媛県にきて、森林の重要性を感じる人も増えるのではなかろうか。
最近地味ではあったがマスコミを上手に利用した例が、映画で公開された「船を降りたら彼女の島」だろう。一歩工夫して生産品とテーマ施設、その情報発信と活性化企画のラインが一つでつながり、そのお金をまた森林整備に使うシステムができれば、「森林と地域と人との共存」が図られる。そして「木は人によりて森となる」のだ。
とにかく、これらの森林の生かし方は一番川下の消費者が知っているようで、私たちの目と耳はそちらに向けられるべきだろう。