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web番愛媛の森林
林業最前線
第一回

このコーナーでは、県内の林業の現場で活躍されている皆さんの様々な取り組みについてご紹介します。第1回目の今回は、元野村町森林組合長で野村町長谷在住の上甲義夫(じょうこうのりお)さんが取り組まれている、広葉樹の森林づくりについてご紹介します。

 
広葉樹の森林づくりに懸ける第三の人生  
元野村町森林組合長 上甲さんの取り組み
故郷の自然への想い
上甲さん(右)と筆者
上甲さん(右)と筆者
 上甲さんは昭和2年生まれの75歳。昭和18年に宇和農業学校を卒業されて農林省農事試験場、地元農協に勤務の後、昭和24年から家業の農業に従事。木炭、栗、キュウリなど、時代の変遷に応じて様々な作物を生産されてきたが、昭和42年からは3期、野村町議会議員として激動する町政の運営に携わられた。退職後は再び帰農し、椎茸、柚の生産に従事されていたが、周囲の強い要請により、昭和63年から平成11年まで野村町森林組合長として地域林業の舵取りに尽力された。
 上甲さんの住む野村町長谷地区は町の南西部にある30戸程の集落で、どの家にも跡取りが居り、他地区の人達が羨む環境である。また、地区面積700haの95%は山林であるが、戦後の木材景気とともにスギやヒノキの植林が進んだものの、「木を植える面積は持ち山の6割に止めておけ」との古老の教えがあったことから今でも雑木林が多く残っており、南予の原風景が偲ばれる。
 しかしながら、「子供の頃にウナギやドンコ、カニやエビなどを捕まえた川は改修され、マツタケやドングリを採取した山はマツクイ虫でマツが枯れてヒノキ山に変わってしまい、慣れ親しんできた故郷の自然は徐々に失われてきた」と上甲さんは言う。公職を退かれた今、「孫やひ孫に故郷の想い出を残してやることがこれからの自分の人生」との使命感から、広葉樹の森林づくりを思い立たれた。

広葉樹の森林づくりへの取り組み
 野村町内では、最近、急激な木材価格の低下により「植林はしたいがスギやヒノキは安くて駄目だ、何か良い木はないものか」との声が多く聞かれるようになった。また、"ミルクとシルクの町"と言われる当町でも、近年、兼業農家の増加に伴い耕作放棄地が目立つようになり、大きな社会問題となっている。
 上甲さん宅でも、ご自身、長年公職に就かれご多忙であったことや、ご子息も建設業を営まれているために平日の百姓仕事がままならず、休耕した田畑が1.2ha程も有った。このため、植栽場所は自宅近くの休耕田畑とし、樹種の選定は地域への普及を前提に、古くから地域の建築材として一般に利用されてきたものの今では稀少になった有用広葉樹とした。
 現在植栽されている広葉樹はケヤキ、イヌエンジュ、ヤマグワ、ホウノキ、トチノキ、クルミなどだが、ここでは、特に力を注いでおられるケヤキの植栽と管理についてご紹介したい。

【ケヤキ -Zelkova serrata Makino- 】
 ケヤキは、我が国では本州・四国・九州に自生し、特に渓谷を好む落葉性の大高木である。
通常は樹高10〜40m、直径1〜2mにも達し、箒状型の樹形が美しいことから、公園樹や街路樹としてお馴染みの木である。
 材は淡黄褐色〜紅褐色、表面に小さな環状模様が入る環孔材で、大黒柱を始めとする建築構造材の他、家具材、漆器材、太鼓の胴・腹材などとして利用されてきた。

■生産目標
品種は価格面で有利な赤ケヤキ(ボタンケヤキ又はホンケヤキ)とし、最終的に0.1ha当たり10本を残して伐期50年で胸高直径50cm、枝下高4m以上の大径材生産を目指す。
最終的に残す木の中間に植栽したものは、大黒柱が採れる大きさになった時点で間伐する。
他の樹種を混植する場合には、イヌエンジュ(魔除けの縁起木)を植栽して30〜40年で間伐して床柱、床框とこかまち、落掛おとしがけなどを生産するか、神光かみこう檜(ヒノキ挿し木品種の一種で、特性は通直、完満)を植栽して枝打ちを行い、20年前後で全伐して無節の垂木や三寸柱を生産する。

■植栽時の注意
水田や畑では植栽前にグリホサートイソプロピルアミン塩液剤を散布してカヤやイタドリ、クズなどの宿根性雑草を駆除した後、イタリアングラスを播種しておくと雑草の発生が抑えられる。
植栽間隔は6m×12mとし、中間にイヌエンジュなどを植栽する。(下図参照)
植栽間隔を余り気にせず肥沃で土の深い所を選び、酸性土壌を嫌うため植栽前に石灰で中和した後、鶏糞(10kg/本)、油粕(3kg/本)、緩効性高度化成肥料(0.2kg/本)を施用する。
苗木は実生の1年生苗(長さ30cm)を苗畑で1年間育成(高さ3〜4m)した上で、通直、健全なものを選んで山出しする。
植栽後は鳥居型の木製支柱と5〜6mの鋼管支柱を立てて固定し、乾燥と雑草防止のために根元周囲を古新聞や古雑誌等で被覆する。

ケヤキの植栽間隔

■植栽後の管理
植えてから降雨の後に除草剤(ペンディメタリン粉粒剤)を散布すれば、約6ヵ月は雑草が生えない。
初期生長の促進と生育期間の延長を図るため、森林用の化成肥料又は塩安、燐安、塩加を配合したものを毎年施用する。
木の生長に伴い、通直になるよう園芸用三脚(3.6m)を用いて5mまで支柱に誘引し、枝打ちや整枝、剪定を行い、枝下高の確保に努める。
特に生長点近くに勢いのある枝が発生すると、分枝や幹曲がりの原因となるので、早めに除去する。
或る程度の枝下高が確保できたら、直径生長を促すために整枝は控え、樹冠の拡大に努める。
折損や虫害で回復の見込みがない場合には、大苗を補植する。

ケヤキの植栽状況 ケヤキの植栽状況(平成14年10月撮影)
平成14年3月に植栽した箇所で、同年12月現在、樹高は5m程に生長している。
胸高直径は2.5〜3.0cmで、植栽時の約2倍に肥大しており、従来の植栽事例と比較してかなり生育が良い。

今後の抱負
 故郷の森林の再生と林業の新たな活路を求めて精力的に活動されている上甲さんの元には、有用広葉樹に関心を持つ人々が集うようになり、今春には森林組合の協力も得て"野村町銘木研究会(仮称)"を発足の予定だそうだ。今後、益々のご活躍と会の発展を期待いたしたい。
 なお、今回ご紹介した内容について更に詳しくお知りになりたい方は、下記までご連絡いただければ、上甲さん自ら秘伝をご教授いただけます。

問い合わせ先(ご自宅)
〒797-1105 東宇和郡野村町大字長谷1132
TEL 0894−75−0337

(文責:財団法人愛媛の森林基金 書記 山内俊作)


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